4期連続の過去最高業績を達成
2026年度は富士フイルムグループの
真価が問われる年
私がCEOとして重視しているのは、これまで実現してきた事業成長を、持続的な企業価値向上へと確実に結びつけていくことです。
中期経営計画「VISION2030」の2年目であった2025年度は、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を共通の軸に据え、売上高は4期連続、営業利益は5期連続、当社株主帰属純利益は6期連続で過去最高を更新しました。全社営業利益率も10.4%となり、富士フイルムグループがこれまで強化してきた稼げる力は着実に成果として表れています。米国追加関税や原材料価格高騰など、数々の環境変化に直面する中でも、ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングの各事業がそれぞれの強みを生かしながら推進してきた取り組みが業績向上に寄与しました。
一方で、私から投資家の皆さまにご説明したいのは、今後当社がどのように企業価値を高めていくのかという点です。私は現在、ヘルスケアと半導体材料などの成長領域を軸とした「事業ポートフォリオの進化」を企業価値向上に向けた最重要課題と位置づけています。2026年度は、これまで進めてきた成長投資の成果を利益とキャッシュの創出につなげ、経営の実行力を示す重要な一年です。私は、これらの課題に真正面から向き合い、VISION2030で掲げた2026年度目標を着実に達成するとともに、2030年度の営業利益率15%以上の実現と資本効率の向上を通じた企業価値向上への道筋をより明確に示していきます。
世界では、地政学的リスクの高まりやサプライチェーンの再構築、気候変動への対応、生成AIをはじめとする技術革新など、企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。先行きを完全に見通すことが難しい時代だからこそ、長期的な視点で進むべき方向を定め、状況に応じて打ち手を柔軟に見直しながら、戦略を着実に実行する力が重要です。短期的に厳しい局面にあっても、社会や市場の動きを敏感に捉え、なすべきことを見極め、信念を持って前へ進む。その積み重ねが持続的な企業価値の向上を可能にすると考えています。
事業ポートフォリオを変革し、
次の成長ステージを切り拓く
私は、事業ポートフォリオに完成形はないと考えています。市場環境や競争構造が変化する中、各事業の成長性や競争力、資本効率を見極め、企業価値を最大化する姿へ進化させ続けることが経営の責任です。
当社グループは約20年にわたり、自ら事業構造を変革してきました。写真フィルム事業で培った技術を起点に、ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングなどへ事業領域を広げ、景気や市場の変動に対する耐性を備えた事業ポートフォリオを構築してきました。
現在、各事業を「基盤事業」「成長事業」「新規/次世代事業」「価値再構築事業」に分類し、市場の魅力度や収益性を見極めながら、経営資源を配分しています。基盤事業で創出したキャッシュを成長事業や新規/次世代事業に再投資する一方、価値再構築事業では、収益性の改善や事業価値の最大化に向けた施策を実行します。この循環を機能させることで、ポートフォリオ全体の質を高めていきます。(下図参照)
多様な事業を持つことは、当社グループならではの競争優位性にもなっています。例えば、写真フィルムの製造で培った化合物の合成・設計技術や品質管理技術を、エレクトロニクスへ応用する。画像処理技術やAIを医療、印刷、製造、業務プロセスへ展開する。さらに、ブランドやデザイン、人材、知的財産を事業横断で活用する――。異なる事業領域で蓄積した経営資源を掛け合わせることで、単一事業だけでは実現できない価値を創出しています。
一方で、過去に築いた事業の形を固定的に捉えるべきではありません。富士フイルムグループ自身が、写真フィルム事業への依存から脱却し、過去の成功体験にとらわれることなく事業構造を変革してきた企業だからこそ、各事業を保有する意義を問い続けながら、将来に最も適した姿を追求しなければならないと考えています。
その考え方を具体的な経営判断として示したのが、2026年8月に発表した、ビジネスイノベーション事業の「パーシャル・スピンオフ」を含む戦略的選択肢の検討開始です。パーシャル・スピンオフは、親会社が子会社を独立させながら、その株式の一部を保有し続ける手法であり、2〜3年後の実行を視野に詳細内容の検討を進めていきます。
2019年の富士ゼロックス完全子会社化以降、ビジネスイノベーション事業は、グループ一体経営の下で構造改革やソリューションビジネスへの転換を進め、収益力と競争力を高めてきました。人材や技術の交流も活発化し、グループシナジーの創出にも成果が表れています。
しかし、デジタル化やAIの急速な進展によって、同事業を取り巻く競争環境は大きな転換期を迎えています。業界全体が複合機やプリンターの販売を中心とした事業から、ITサービス、DX支援、さらにはAI活用へと事業の重心を移しつつあり、業界再編や協業の動きも始まっています。この変化を次なる成長機会として確実に取り込むためには、より迅速で機動的な経営判断が必要であり、これまでの延長線上にとどまらない新たな経営のあり方が必要であると判断しました。市場環境の変化に受動的に対応するのではなく、競争力と収益力を備えている今だからこそ、将来を見据えた次の一手を検討することが重要だと考えています。
私が重視したのは、単に事業を切り離すことではありません。ビジネスイノベーション事業が持つ高いキャッシュ創出力や技術力、顧客基盤に加え、グループ全体で共有するブランド、人材、技術、知見は、今後も双方の成長を支える重要な強みです。だからこそ目指したのが、「経営の自立性と機動性の向上」と「グループシナジーの維持」の両立です。完全な分離ではなくパーシャル・スピンオフを検討しているのは、この二つを同時に実現するためです。
環境変化を前に既存の形を守るのではなく、将来の成長に最も適した形へ自らを変えていく。これこそが、富士フイルムグループのトランスフォーメーション力です。ビジネスイノベーション事業とグループ全体の双方がさらなる発展を遂げ、企業価値の最大化につなげられるよう、最適な姿を追求していきます。
バイオCDMO事業を
利益創出フェーズへ移行させ、
投資成果を収益へ転換する

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- FUJIFILM Biotechnologiesのノースカロライナ拠点の施設を視察
企業価値向上を実現するために、今後さらに強化しなければならないのが資本効率です。
当社グループはこれまで、ヘルスケアや半導体材料を中心に、将来を見据えた積極的な投資を行ってきました。特にバイオCDMO事業では、大型設備投資を通じて、生産能力や品質保証体制を強化しています。これらは、中長期的な成長の実現に不可欠である一方、投資が先行する局面では、投下資本利益率(ROIC)やフリー・キャッシュ・フロー(FCF)に影響を及ぼします。
2025年度の全社ROICは、先行投資の継続やバイオCDMO事業の収益改善の遅れなどにより、前年比0.4ポイント低下の5.5%となりました。特に、バイオCDMO事業の収益貢献の遅れについては、同事業の経営体制の強化や収益改善のシナリオの明確化などにより、投資家の皆さまの懸念を払しょくしていく考えです。今後は、新設のノースカロライナ拠点を含む大型設備の安定稼働と生産性向上、中小型設備におけるアーリー案件の受注拡大を進め、これまでの投資効果を顕在化させていきます。全社では、予定通り2026年度にFCFの黒字化を見込んでいます。さらに、2030年度の自己資本利益率(ROE)10%以上の達成と、株価純資産倍率(PBR)の持続的な改善を目指します。
あわせて、政策保有株式の縮減、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の最適化を進め、資本効率とキャッシュ創出力を高めます。株主還元についても資本配分の重要な要素です。将来に向けた投資を優先しながら、FCFの創出状況や資本効率、財務健全性を総合的に勘案し、機動的に実施します。2026年4月に5年ぶりに実施した自己株式の取得も、資本コストや株価を意識した経営姿勢を示すものです。
私は、富士フイルムグループを、投下資本に見合う利益とキャッシュを着実に創出し、その成果が資本市場から適正に評価される会社へ進化させることを目指します。今後も必要な投資は継続しますが、その投資には明確な規律を持たせます。資本コストを意識した経営を徹底し、成長を企業価値へと転換していきます。
ヘルスケアと半導体材料を成長の両輪に、
「エコノミック・モート(経済の堀)」を強化する
私は、かねてより「全ては現場に宿る」という信念の下、現場を自分の目で見て、嗅覚を働かせ、将来の可能性を捉えながら、事業の進化に尽力してきました。17年にわたる海外勤務や10年以上携わったメディカルシステム事業を通じて強く実感したのは、社会や顧客の課題解決に真摯に向き合うことこそが、新たな事業機会を生み出すということです。
将来を見据えてまいてきた種は、日立製作所から買収した画像診断事業や、がん検診を中心とする健診サービス「NURA」など、さまざまな形で着実に結実しています。現場で課題を捉え、当社グループが持つ技術や知見を組み合わせながら解決策として提供することを積み重ね、新たな事業の創出と成長につなげてきました。
2021年6月に社長に就任して以来、私が一貫して注力してきたのが、ヘルスケアと半導体材料を将来の成長の柱へと育てることです。いずれも社会課題の解決に直結し、中長期的な市場拡大が見込まれると同時に、当社グループの技術や知的財産、グローバルな事業展開力を生かせる領域です。私が重視しているのは、成長市場に参入するだけではありません。必要な経営資源を機動的に投入し、強いブランド、高い市場シェア、顧客との長期的な信頼関係など、他社が容易に模倣できない「エコノミック・モート(経済の堀)」を強化し、持続的な競争優位を築く戦略です。
ヘルスケアでは、バイオCDMOやライフサイエンス、内視鏡、医療ITを中心に、事業を拡大しています。内視鏡事業のグローバル展開に加え、AIを活用した画像診断支援や「NURA」、医療現場の業務効率化など、医療AIを中核として、医療機器や技術、ノウハウを組み合わせた価値を提供しています。診断や治療を取り巻く課題を総合的に解決することで、医療の質の向上に貢献するとともに、差別化を図っていきます。
バイオCDMO事業では、高度な生産技術や品質保証力、規制対応力に加え、米国・欧州の最新鋭の製造設備を活用し、高品質なバイオ医薬品を安定的に供給できる体制を整えています。2027年には富山県に建設中の国内最大級のバイオ医薬品CDMO工場が稼働予定です。抗体医薬品の原薬製造から製剤化・包装までワンストップで提供し、製薬企業やバイオベンチャー、アカデミアなど幅広い顧客を、医薬品の開発初期段階から商業生産まで一貫して支援します。大型製造設備の安定稼働、顧客案件の立ち上げ、受注の拡大を加速させ、信頼されるパートナーとしての役割を果たしていきます。
半導体材料事業も、生成AI、データセンター、自動運転、IoTなどの進展を追い風に、大きな成長機会を迎えています。当社グループは、半導体製造プロセスの幅広い工程で使用される材料を提供し、顧客の課題に応えるワンストップソリューションを展開しています。その競争力を支えているのが、「地産・地消・地援」の考え方に基づくグローバルな事業体制です。研究開発・生産・技術サポートを各地域で一体的に展開することで、技術革新の速い市場においても、顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応しています。また、インドをはじめとする有望市場での展開も強化します。現地に根差した供給・支援体制を整え、将来の需要を着実に取り込んでいきます。さらに、環境対応を含む次世代材料の開発と供給体制の強化を通じて、半導体産業の持続的な発展に貢献していきます。
ヘルスケアと半導体材料に共通するのは、社会や顧客の課題に当社グループの技術とトランスフォーメーション力で応え、人々の生活や産業に不可欠な価値を提供していることです。今後も各事業のエコノミック・モートを強化し、市場における競争力と社会への提供価値を拡大していきます。
人的資本と知的資本を掛け合わせ、
AI・DXで競争優位を盤石にする
富士フイルムグループの競争優位を支えているのは、有形資産だけではありません。人的資本と、技術、知的財産、ブランド、デザイン、AIなどに代表される知的資本といった無形資産こそが、価値創造の源泉です。
当社グループは、写真フィルム事業で培った化学、材料、画像、精密加工などの技術をさまざまな事業領域へと展開してきました。その過程で蓄積してきた知的資本と、それを活用する人材は、事業構造を変革し続けてきた当社グループ固有の経営資産です。
AI・DXは、価値創造を加速する重要な経営基盤です。研究開発の高度化、製造プロセスの最適化、サプライチェーンの強化、管理業務の効率化、意思決定の高度化など、AIは事業の競争力を変革する力を持っています。2026年度以降は、各事業や開発・調達・製造・マーケティングなどの各機能で生成AIの活用をさらに推進し、意思決定のスピードと質を上げていきます。これにより、新たな事業機会の獲得、生産性の改善、資本効率の向上を図っていきます。当社の経営戦略と連動したDX戦略と取り組みは高く評価され、「DX銘柄」に2年連続で選定されました。
一方で、AIの価値を最大限に引き出すのは人です。従業員一人ひとりがAIを使いこなし、専門性を磨きながら新たな課題に挑戦できる環境づくりが欠かせません。
2025年度に実施した従業員エンゲージメントサーベイでは、エンゲージメントスコアが昨年度の調査に続き高い水準の82%となり、「パーパスの自分ごと化」や「イノベーション」、「コミュニケーション・連携」に関するスコアも向上しました。エンゲージメントサーベイをx通じて従業員の声を経営に反映するとともに、組織の状態を可視化し、各職場での建設的な対話と改善を進めることで、活力のある職場環境づくりを進めています。
そして、世界に在籍する約74,000名の従業員が互いを認め合い、一人ひとりの個の力を発揮できる企業文化のさらなる発展にも注力しています。変化をチャンスと捉えて挑戦を重ねるための「自己成長支援プログラム」をグローバル展開し、従業員の成長を多面的に支援しています。また、「富士フイルムグループの成長は、従業員とその家族の笑顔と共にある」という思いの下、各拠点でファミリーデーを開催しているほか、育児支援制度の充実や介護リテラシーを深める機会の提供、介護支援制度の拡充を進めています。従業員がライフステージの変化に応じて能力を最大限発揮できる環境を整えることは、人的資本の強化につながる重要な取り組みです。
さらに、会社が発展していくためには、従業員が心身ともに健やかであることも重要であり、従業員の健康維持増進に積極的に投資しています。2019年に「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定し、CEOを「健康経営最高責任者」、人事部長を「健康経営責任者」とする推進体制の下、グローバルで健康経営を実践しています。富士フイルム従業員向け健診施設「富士フイルムグループ健康保険組合富士フイルムメディテラスよこはま」には、メディカルシステム事業が提供する最新の医療機器やAI技術を活用した医療ITシステムを導入しています。2026年度からは、難治性の膵臓がんの早期発見を目的とした「すい臓がんドック」も開始しました。これらの取り組みが評価され、2020年から6年連続「健康経営銘柄」に選定されています。
パーパスの実践が
トランスフォーメーション力の源泉となる
なぜ富士フイルムグループは変革を続けることができるのでしょうか。その答えは、人の力にあります。そして、その力を引き出す共通の軸が、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」です。
2024年1月、創立90周年を機にパーパスを制定して以来、私は国内外のさまざまな拠点を訪問し、従業員との直接対話を重ねてきました。その場で繰り返し伝えているのは、「社会課題の解決や人々の笑顔につながる価値創出の起点は、一人ひとりのアスピレーション、すなわち志にある」ということです。自分は何を成し遂げたいのか。自分の仕事を通じて、誰に、どのような価値を届けたいのか――。このような問いに向き合うことで、パーパスは理念にとどまらず、日々の判断や行動に生きるものになります。この2年間の対話を通じて、従業員が仕事の意義を見つめ直し、行動を起こす姿が世界各地で生まれていることを実感しています。
その象徴的な事例の一つが、インドネシアでの取り組みです。私は2026年5月、現地法人PT. FUJIFILM INDONESIA(FFID)が取り組む「初めての家族写真」プロジェクトの現場である孤児院を訪問しました。この活動では、親を失った、あるいは親と共に暮らすことができない子どもたちを「instax“チェキ”」で撮影し、その成長の記録を残しています。FFIDの有志による小さな社会貢献活動から始まりましたが、共感の輪が社内外へ広がり、インドネシアの大手出版社との協働によるアートブック「instaxnesia」の制作・販売へと発展しました。その収益を孤児院の支援に活用することで、社会価値の創出と活動の継続性を両立する取り組みへと進化しています。
孤児院で、仲間との「家族写真」を手にした子どもたちが笑顔で語り合う姿を目の当たりにしたとき、私は強く心を動かされました。写真をきっかけに人と人とのつながりが生まれ、笑顔が広がっていく。その光景は、写真の持つ力と、富士フイルムグループの製品や技術が社会にもたらす価値を象徴するものでした。

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- インドネシアの孤児院を訪問し、instax“チェキ”で記念撮影
さらにこの活動は、インドネシアの保健省や教育省からの要請を受け、学生が高齢者の写真を「instax」で撮影し、手紙とともに届けるナショナルキャンペーン「一通の手紙、100万の笑顔」へ広がりました。現場の思いから始まった活動が共感の輪を広げ、社会を動かしていく。これは、富士フイルムグループが目指す価値創造の一つの姿です。
技術や設備だけではイノベーションは生まれません。社会や顧客の課題を自分事として捉え、「成し遂げてみせる」という強い意志を持った従業員がいて初めて、技術や事業は新たな価値を生み出します。パーパスは、一人ひとりのアスピレーションを引き出し、それを新たな価値創造や事業の競争力へと結びつける経営の軸です。私はこれからも世界各地の現場に足を運び、従業員との対話を大切にしていきます。多様なアスピレーションと知恵を結集することで、変化を恐れず、自ら未来を切り拓く企業文化をさらに強くしていきます

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- 「グループパーパス・アンバサダー」を育成するリージョナルトレーナー
育成プログラムに参加した各国の従業員と対話
サステナビリティを経営の根幹に据え、
社会価値と経済価値を両立する
地政学リスクや気候変動、人権、サプライチェーン、情報セキュリティなど、企業を取り巻く環境はますます複雑化しています。一方で、半導体サプライチェーンの再構築や、医療アクセスの向上、脱炭素社会への移行などといった社会課題への対応は、当社グループの技術や事業を生かせる機会でもあります。リスクの顕在化を防ぐだけでなく、社会や市場の動きを先取りし、新たな製品、サービス、事業モデルを生み出す。社会価値と経済価値を両立することが、長期的な企業価値を高めると考えています。
例えば、脱炭素化に向けては、海外産バイオメタンを原料とする都市ガスの活用を開始しました。国内の化学業界では初※となる取り組みであり、製造プロセスにおける燃料利用のカーボンニュートラル化に向けた意義ある一歩です。
こうした考え方の背景には、創業以来受け継いできた価値観があります。祖業である写真フィルムは、製造時に清浄な水や空気を必要とし、また撮影前に写真フィルムの品質を確認できないことから、お客さまに信頼を買っていただく製品でもありました。だからこそ当社グループには、自然環境への敬意と、品質や信頼を重視する姿勢が創業時から深く根づいています。
富士フイルムグループにとって、サステナビリティは経営の根幹です。長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030(SVP2030)」では、「環境」「健康」「生活」「働き方」「サプライチェーン」「ガバナンス」を重点分野(マテリアリティ)として定め、事業戦略と一体で取り組みを推進しています。社会課題の解決を起点に事業機会を創出し、その成果を「事業」「人材育成・労働環境整備」「ESG課題への取り組み」x「株主還元」へと再投資する。この循環を継続的に機能させることが、当社グループのサステナビリティ経営の本質です。同時に、リスク管理体制の高度化も進めています。リスクの発生を未然に防ぐとともに、顕在化した場合の影響を最小限に抑えることで経営のレジリエンスを高め、ステークホルダーからの信頼に応えていきます。
※ 海外産バイオメタンを原料とした都市ガスを、化学業界の製造拠点向けに供給する取り組みとして。公開情報ベース(東京ガス調べ)
100年先の未来に有益な価値を提供し、
世界中の笑顔の回数を増やしていく
富士フイルムグループがこれからも社会に必要とされる企業であり続けるためには、時代の変化を先取りし、未来に向けた価値を創造し続けることが不可欠です。どのような環境変化の中にあっても、挑戦し続けるという私の信念は変わりません。課題に直面したときに立ち止まるのではなく、考え抜き、最善の決断を下し、迅速に行動する。その積み重ねが新たな価値と次の成長機会につながります。
富士フイルムグループの約74,000名の従業員は、それぞれ異なる経験や専門性、アスピレーションを持っています。その多様なアスピレーションと知恵が交わることで、新たな発想やイノベーションが生まれます。これこそが富士フイルムグループの未来を切り拓く原動力です。
私のアスピレーションは、「100年先の未来に有益なものを残す」ことです。その実現に向け、当社グループでは現在、SVP2030のさらに先を見据えた「2040年のありたい姿」の検討を進めています。技術革新や社会構造の変化が加速する中で、当社グループは社会にどのような価値を提供し、どのような企業であり続けるべきか。マテリアリティや事業ポートフォリオ、技術、人材のあり方を含め、長期視点での議論を重ねています。
2030年に向けた目標を達成することは重要です。しかし、それはゴールではありません。その先の未来においても社会に必要とされ続けるために、自らを変革し、新たな挑戦を続けていくことこそが私たちの使命です。2026年度は、VISION2030の目標達成に向けた重要な実行フェーズであると同時に、その先の成長ステージへ向けた転換点でもあります。
私たちは、パーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」の下に全社のベクトルを合わせ、事業成長を企業価値へと着実に転換しながら、ステークホルダーの皆さまの期待に応え、持続的な価値創造を実現してまいります。
